日帰り手術・治療
多焦点眼内レンズ
多焦点眼内レンズとは
白内障手術時に用いられる眼内レンズには、大きく「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」の2種類があり、白内障手術を受けられる前にレンズ選びをしていただきます。
●単焦点眼内レンズ[保険診療]
ピントを合わせたい距離を決めて、その距離1箇所だけにピントが合う。
それよりも遠くや近くはメガネでピントを調節する。
●多焦点眼内レンズ[選定療養]
2焦点以上の距離にピントが合う。
メガネはほとんど不要。
白内障手術後の快適な見え方を実現するためには、目の状態、年齢、職業、ライフスタイル、趣味、性格など様々な観点を考慮してレンズ選びをする必要があります。当院では、患者様の多様なニーズに応えられるよう多焦点眼内レンズを数種類取り扱っております。
このページでは、眼内レンズ選びで後悔しないよう、それぞれのレンズの違いやメリット・デメリット、レンズの種類、費用などを詳しく説明しています。最適なレンズ選びのご参考にされてください。
単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの違い
「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」の違いは、焦点の数になります。
焦点の数の違いによる、見え方の変化をイメージ画像でご説明いたします。
単焦点レンズの見え方イメージ
上の画像は単焦点眼内レンズで「遠く」の1焦点を合わせた場合の見え方のイメージです。
単焦点眼内レンズは、ピントが合っている箇所ははっきりと良く見えますが、それ以外の距離にはピントが合わないので、「遠く」に焦点を合わせた場合には、近く(手元)や中距離を見る場合にはメガネが必要になります。
2焦点レンズの見え方イメージ
上のイメージ画像は多焦点眼内レンズで「近く」と「遠く」の2焦点に合わせた場合の見え方のイメージです。
この場合、「近く」と「遠く」の2箇所はクリアに見えますが、「中間距離」は見えづらいというデメリットがあります。
2箇所にピントが合うため、単焦点眼内レンズに比べるとメガネをかけることが少なくなりますが、見る距離によっては眼鏡が必要になることもあります。
3焦点レンズの見え方イメージ
上のイメージ画像は多焦点眼内レンズで「近く」「中間距離」「遠く」の3焦点に合わせた場合の見え方のイメージです。3つの焦点距離がクリアに見ることができ、2焦点眼内レンズよりも、さらにメガネをかけることが少なくなります。
多焦点眼内レンズのメリット
メガネ・コンタクトなしで生活できる
多焦点眼内レンズは、メガネ・コンタクトなしで見える範囲が広がります。手術後、できるだけ裸眼で生活したい方には、多焦点眼内レンズがおすすめです。
※多焦点眼内レンズを使用している状態でも、状況次第ではメガネ・コンタクトを使用した方が良い場合もあります。
白内障手術時に、老眼や乱視の改善が期待できる
老眼の矯正、乱視を矯正できる付加価値の付いた眼内レンズがございます。適切な多焦点眼内レンズを選択することで、白内障の改善だけでなく、老眼や乱視も改善でき、生活の質を向上させることができます。
多焦点眼内レンズのデメリット
多焦点眼内レンズは、メリットが多く患者様の満足度が高いレンズですが、デメリットもございます。
メリットとデメリットを理解いただいた上で、ご自身に合ったレンズをお選びいただくことが大切です。最近では、レンズの改良が進み、コントラスト感度やハロー・グレア現象が改善されたレンズも登場しています。
コントラスト感度の低下
多焦点眼内レンズは、単焦点眼内レンズと比べると、コントラスト感度が低下すると言われています。
コントラストとは映像のシャープさや、微妙な濃淡のことです。
白内障の症状がある程度進行している場合は、もともとコントラストが低下しているので、多焦点眼内レンズを挿入したとしてもコントラストが向上します。白内障の症状が軽度であったり、ほとんど自覚症状がない場合は、術前よりもコントラストの低下が気になる場合があります。
手元で非常に緻密な業務をされるお仕事の方や、色彩感覚がお仕事に影響される方などの場合は、見え方に満足できないこともあります。
正常なコントラストのイメージ
コントラスト感度が低下したイメージ
夜間のハロー・グレア現象
多焦点眼内レンズでは、夜間にハロー・グレア現象が生じます。ハローは光のまわりに輪がかかったように、グレアは強い光をまぶしく感じる現象です。この現象は、瞳孔が大きくなっている状態(薄暗い所、暗いところ)で生じます。
白内障手術後、最初はハロー・グレア現象に慣れない方もいらっしゃいますが、生活や仕事に影響することは少なく、時間が経過するにつれて気にならなくなる方がほとんどです。
ドライバーなど、夜間の運転が多い方は、慎重に多焦点眼内レンズを検討しましょう。多焦点眼内レンズの種類によってはハロー・グレア現象を軽減させるタイプのレンズもあります。
見え方に慣れるまで時間がかかる場合がある
単焦点眼内レンズに比べ、多焦点眼内レンズの見え方に慣れるには時間がかかると言われています。
多焦点眼内レンズが入っている眼では、遠くと近くの両方に同時にピントが合っているという、これまでに無い経験をしていることになります。人は目から送られた情報を脳が処理して見ています。そのため、多焦点眼内レンズを通じて得られた像が脳で順応するまでに、時間がかかることがあります。
数日で慣れる方もいれば、数か月かかる方がいらっしゃいます。稀ですが時間をかけても適応できない場合もあります。
多焦点眼内レンズが向いている人・向いていない人
向いている人
●眼鏡、コンタクトレンズの依存度を下げたい方
●裸眼で生活したい方
●白内障以外に目の病気のない方
●多焦点眼内レンズの特性(メリット・デメリット)をご理解いただける方
●場合によっては眼鏡やコンタクトレンズが必要になることもある程度許容いただける方
向いていない人
●白内障以外の目の病気がある方(緑内障、眼底疾患など)
●瞳孔が小さい方
●見え方に対して神経質な方
●見え方の質やこだわりが仕事に影響する方(カメラマン、デザイン関係、歯科医 など)
当院で取り扱っている多焦点眼内レンズ
当院で取り扱っている多焦点眼内レンズは、全て選定療養対象の多焦点眼内レンズです。
ファインビジョンHP(FineVision HP)
●特徴
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遠方・中間距離(約75㎝)・近方(約35㎝)の3焦点眼内レンズで、中でも近方(30~35㎝)を得意とするレンズです。
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同じ3焦点型であるクラレオン パンオプティクスと比べて、近方の焦点距離が35cmとより近いため、より手元の見え方を重視されたい方におすすめです。
●このレンズが向いている方
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眼鏡はなるべく外したい人
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手元の作業を重視したい人
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夜間の運転はしない人
テクニスシナジー(TECNIS Synergy)
●特徴
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連続焦点型の多焦点眼内レンズで、近方(約33cm)から中間距離・遠方まで連続的に見ることができます。
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乱視矯正にも対応しています。
●このレンズが向いている方
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眼鏡はなるべく外したい人
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乱視矯正を希望する人
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夜間の運転はしない人
クラレオン パンオプティクス(Clareon PanOptix)
●特徴
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遠く・中間(約60cm)・手元(約40cm)の3点にピントが合う3焦点眼内レンズです。
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パソコン操作に快適な距離と言われている「中間距離60cm」の加入度数を強化しています。この中距離焦点60cmは、パソコン・スマホを多様する際や、テレビの視聴、料理、運転、スポーツなど、現代の生活の上で非常に重要なピントと言えます。
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乱視矯正にも対応しています。
●このレンズが向いている方
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眼鏡はなるべく外したい人
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夜間に運転をしたい人
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乱視矯正を希望する人
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パソコン作業、料理、テレビ視聴、運転、屋外スポーツなどを楽しみたい人
クラレオンビビティ(Clareon Vivity)
●特徴
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独自の技術である「波面制御型焦点深度拡張レンズ」が採用されており、遠方から中間(約70㎝)までのピントが合うレンズです。
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多焦点眼内レンズ特有のデメリットが最小限に抑えられているレンズです。幅広い焦点距離をカバーしながらも、単焦点眼内レンズと同等程度のコントラスト感度(見え方の質)を持ち、ハローグレアを最小限に抑えています。
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手元の作業や読書などは、基本的にメガネが必要になります。
●このレンズが向いている方
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夜間に運転をしたい人
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中間〜遠くをメガネなしでよく見たい人
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ゴルフなどのスポーツを楽しみたい人
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手元を見る際にメガネを使用して大丈夫な人
選定療養とは
選定療養対象の多焦点眼内レンズを使用した白内障手術では、手術にかかる費用は単焦点レンズと同じく健康保険適応となりますが、多焦点レンズにかかる代金は別途自己負担となります。
手術代金の一部は保険で賄われるため、その分自由診療より安価となります。
※当院で取り扱っている多焦点眼内レンズでは、全て選定療養対象の多焦点眼内レンズです。